群大,感染によるアトピー性皮膚炎の症状改善のメカニズムを解明

群馬大学は,マラリア感染によるアトピー性皮膚炎の症状改善の作用機序を明らかにすることに成功した(ニュースリリース)。

長年にわたる疫学的臨床研究でアトピー性皮膚炎の発症は先進国で多く,発展途上国で少ないことが分かっている。なぜこのような違いが生じるのかはまだ分かっていないが,寄生虫感染がその原因の一つと考えられている。

研究グループは,アトピー性皮膚炎の動物モデルとして,自然に湿疹を発症するNC/Nga マウスを用いた。湿疹のあるNC/Nga マウスにマラリアを感染させたところ,マラリアの感染症状がすすむにつれ,アトピー性皮膚炎の湿疹病変が改善した。

湿疹のある皮膚と湿疹が良くなった皮膚を病理組織学的に比較したところ,湿疹が良くなった皮膚ではナチュラルキラー細胞が増加していることが明らかになった。

次に,ナチュラルキラー細胞が増加しないような薬剤を投与した後にマラリアを感染させると,良くなるはずの湿疹病変が良くならずに湿疹病変が残ることが分かった。さらに湿疹のあるNC/Nga マウスに,マラリア感染で増加したナチュラルキラー細胞を静脈から移入すると湿疹病変が改善した。

これらの結果より,アトピー性皮膚炎の皮膚病変の改善にはマラリア感染した別のマウスから採取したナチュラルキラー細胞が関与していることを突き止めた。この成果は,将来的にアトピー性皮膚炎治療における医薬品の開発を含めた臨床応用に貢献できることが期待される。

研究グループは今後,マラリア感染によりナチュラルキラー細胞が増加するメカニズムを解明することで,感染以外の方法でもナチュラルキラー細胞を増やすことができるかを探求していきたいとしている。

関連記事「京大,おむつかぶれのメカニズムを解明」「長崎大,三日熱マラリアの起源を明らかに