国循ら,より早い血栓溶解療法が脳梗塞の治療効果を高めることを証明

国立循環器病研究センター(国循)ら,脳梗塞血栓溶解療法の国際共同研究グループは,超急性期脳梗塞患者に対して施行された1990年代以降の静注血栓溶解療法無作為化臨床試験の成績を統合して解析した(ニュースリリース)。その結果,現在わが国でも承認されている発症後4.5時間以内の治療開始が,年齢や脳梗塞重症度に関わらず転帰良好者の割合を高め,4.5時間以内であってもより早い治療開始がさらに治療効果を高めることを,多数例の解析結果として示した。

遺伝子組み換えによる組織型プラスミノゲン・アクティベータ(一般名アルテプラーゼ)を用いた超急性期脳梗塞への静注血栓溶解療法は,わが国では発症後4.5時間以内の脳梗塞患者に対して,年齢や重症度による制限なく(ただし高齢者や重症脳梗塞例には,慎重な適応判断が必要)行なうことが出来る。

しかしながら,米国などでは発症後3時間を過ぎると保険適応外となり,また欧州などでは80歳を超える高齢者や重症脳梗塞例に使用が制限されている。逆に,軽症の脳梗塞患者への治療効果も,確立していない。そこでこの研究では,とくに発症後の治療開始時間,年齢,脳梗塞重症度に重点を置いて,国際的に有名な9つの静注血栓溶解療法無作為化臨床試験の統合解析を行なった。

その結果,発症後3時間以内の治療開始例では,転帰良好が血栓溶解治療群で32.9%,3~4.5時間の治療開始例では各々35.3%,30.1%と,治療群で有意に転帰良好の割合が高く,4.5時間以降では各々32.6%,30.6%で有意差を認めなかった。また年齢が80歳を超える群も,80歳未満の群も,血栓溶解治療群で有意に転帰良好の割合が高く,同様に神経所見重症度の尺度での軽症例や重症例でも,血栓溶解治療群で有意に転帰良好の割合が高いことが分かった。

発症後7日以内の致死的頭蓋内出血は,発症後の治療開始時間,年齢,脳梗塞重症度のいずれにもかかわらず,血栓溶解治療群で有意に高い割合を示した。90日後の死亡率は,血栓溶解治療群で17.9%,対照群で16.5%と群間差を示さなかった。

研究グループは,この研究結果は各国での静注血栓溶解療法の適応を再考する契機となると共に,わが国の適正治療指針の妥当性を示す根拠ともなるとして,今後,さらに解析を進めるとしている。

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