山口大,培養自己骨髄細胞による低侵襲肝臓再生療法の臨床研究を開始

山口大学が申請していたヒト体性幹細胞を用いる臨床研究の実施計画を,厚生労働省は7月18日に了承した(ニュースリリース)。

この研究は,進行した非代償性肝硬変の患者から局所麻酔下に骨髄液を約30ml採取し,それを培養装置内で約3週間培養して骨髄間葉系幹細胞を含む細胞群を増やし,品質・規格・安全性の評価を行なった後,その細胞を懸濁液として,採取された患者さんの腕の静脈から点滴投与により体内に戻すというもの。

この治療を施すと,肝硬変の原因となっている隔壁を構成する線維が減少して,肝硬変の状態が改善し肝機能も回復することが,これまでの動物を使った研究からわかっている。

この治療法の作用の仕組みとして,肝臓に集積した骨髄間葉系幹細胞が,肝硬変の局所に働いて蓄積した線維を減少させることが考えられている。この臨床研究の目的は,主として安全性を確認することで,投与6ヶ月後まで有害事象の発生頻度を観察し,併せて肝臓機能を調べて効果についても推測する。

この骨髄細胞の培養に関して山口大学医学部附属病院では,厚生労働大臣の正式な承認を得た後,諸準備を整えて必要な手続きを経てから,10名の非代償性肝硬変の患者を対象として開始することを計画している。

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