京大ら,網膜色素変性の進行を抑制する新規神経保護剤を発見

京都大学とDaito Chemixは共同研究により,VCPという蛋白質のATPase活性に対する阻害剤(KUS化合物)が神経保護効果を持ち,網膜色素変性の進行を抑制する効果を持つことを,網膜色素変性モデルマウス(rd10)を用いて明らかにした(ニュースリリース)。

網膜色素変性は,日本において中途失明の第3位の原因疾患であり,特に60歳以下では,視覚障害原因の1位となっている。日本における患者数は1万6,000人~3万2,000人と概算されている。網膜の視細胞(光を受容する細胞)の中で働く遺伝子の異常が原因となり,現在までに40種類以上の遺伝子異常が報告されている。

原因遺伝子はさまざまだが,視細胞が変性・脱落することにより,徐々に進行する視野障害・視力障害をきたす。神経成長因子・遺伝子治療・幹細胞移植・人工網膜などによる治療が精力的に試みられているが,現状では,進行を抑制する根本的な治療法は確立されておらず,厚生労働省から難病に指定されている。

今回の研究では,視細胞の変性・死滅を予防・抑制することにより病気の進行を食い止める,つまり,神経保護による網膜色素変性の進行抑制という視点から研究を行なった。具体的には,体中の細胞に大量に存在し,細胞内のエネルギー源であるATPを消費する蛋白質(ATPase)の一つである,VCPという蛋白質に着目した。

そのATP消費を抑制するような物質(低分子化合物)を新規合成し,その中から,細胞・神経保護活性のあるものを同定,網膜色素変性モデルマウスに投与し,光干渉断層計を用いて調べるなどして,網膜色素変性の進行抑制効果を確認した。

研究グループは今後,KUS 化合物の医薬品としての開発を目指す。医薬品品質での製剤化,GLP レベルでの動物での安全性試験を実施後,短期間で神経保護効果の判定ができる眼難治疾患を対象とした,臨床研究を数年に開始するとしている。

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