上越教育大,ライブとテレビにおける学習中の子どもの脳の働きの違いを解明

上越教育大学は,目の前の他者(ライブの他者)から学習する場合とテレビの中の他者から学習する場合を比較し,子どもの脳の働きが異なることを示した(ニュースリリース)。これは,子どもがテレビから学習する際の脳内機序の特徴を初めて示した成果。

テレビは子どもにとって現実とは異なる世界であり,テレビによる認識やテレビからの学習は重要な研究課題。これまでの研究から,4~5歳頃からテレビの他者から学習できることが示されていたが,テレビから学習する場合と,ライブで学習する場合とで,学習プロセスや脳内機序が同じであるかどうかは分かっていなかった。

研究は,幼児(5~6歳)15名と成人15名が参加した。参加者は,目の前のモデル(ライブ条件)およびテレビに映ったモデル(テレビ条件)がカード分けゲームをしている様子を観察した(観察段階)。カードには色と形の2つの属性があり,モデルは色か形のどちらか一方のルールでカードを分類した。

その後,参加者にはモデルと同じルールでカードを分けるように指示した(分類段階)。その結果,幼児と成人のどちらにおいてもカード分けの成績は,ライブ条件とテレビ条件の間に違いはなかった。

また,観察段階の脳活動を,近赤外分光法を用いて計測・解析した。近赤外線分光法で,脳活動に伴う脳内の酸化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン)と脱酸化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビン)の変化量を計測することができる。

標的とした脳の領域は,運動関連領野。運動関連領野は,運動指令を出す脳領域だが,自分が行動しているときだけではなく,他者の行動を観察しているときにも活動することが知られている。ライブ条件およびテレビ条件の観察段階における運動関連領野の活動を計測し,観察も分類もしていない安静段階における運動関連領野の活動と比較した。

その結果,成人においてはライブ条件とテレビ条件のどちらにおいても運動関連領野の酸化ヘモグロビン量は時間とともに増加した。ところが,幼児においては,ライブ条件では左の運動関連領野の酸化ヘモグロビン量が時間とともに増加したが,テレビ条件では同領域の酸化ヘモグロビン量の増加は認められなかった。

これは,幼児も成人と同様に,ライブ条件とテレビ条件のどちらからも学習することが可能であるにもかかわらず,テレビから学習する場合は,他者認識と関連する運動関連領野が活性化していないことを示している。これらの結果は,ライブの他者とテレビの他者から等しく学習できる幼児においても,その学習プロセスや脳内機序は異なることを示唆している。

研究グループは今後,運動関連領野以外の領域の活動がいかに異なるかを検討することで,テレビから学習する際の学習プロセスや脳内機序をより明確にすると共に,ライブとテレビの違いを認識しつつ,いかにして効率よくデジタル機器から学習することができるかを探りたいとしている。

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