電磁材料研究所ら, 大きな誘電率と磁気-誘電効果を示すナノグラニュラー材料を開発

電磁材料研究所,東北大学,日本原子力研究開発機構の研究グループは,全く新しい発想による多機能性材料の開発に成功した(ニュースリリース)。

開発した材料は,ナノグラニュラー材料と呼ばれるナノ磁性粒子を誘電相中に分散させた金属と,絶縁体の2相からなる薄膜誘電体材料であり,室温で大きな誘電率と磁気-誘電効果を示すことを見いだした。

これまでの誘電体材料の研究は主として結晶性セラミックスだったが,最近はマルチフェロイックスと言われる多機能性の材料が注目され,磁界による誘電率の応答特性の研究が盛んに行なわれている。しかしながら,その応答特性はマイナス170℃程度の極低温でなければ発現せず,実用デバイスに使用することは不可能だった。

今回,磁性金属として鉄(Fe)-コバルト(Co)合金,絶縁体としてフッ化マグネシウム(MgF2)をターゲットとしたスパッタ法によりナノグラニュラー材料を作製した。Fe-Co粒子は最大の磁化を有する相であり,MgF2相は安定な化合物であるため,膜中では両者が完全に分離して存在する。この全く物性の異なる物質をナノスケールで混在させることにより,ナノ量子効果による新しい機能を生成させることを期待した。

その結果,膜の誘電率が約500と極めて大きな値を発現することを見出した 。さらに,磁界中で誘電率を計測した結果,常温で約3%(現在は8%が得られている)という誘電率の変化を示した。さらに,この現象が発現する機構を明らかにするため,理論的考察を行なった結果,新しいナノ量子効果であるスピン依存電荷分極に基づく現象であることを解明した。

この新しい材料は,必要な周波数に対応して材料特性を磁場により自己調整できることから,今後開発が進めば,従来別々の受信機が必要であった低周波帯域(VHF)のアナログ放送と高周波帯域(UHF)のデジタル放送の両方を一つの機器で受信が可能となる。

すなわち,自己調整機能を持つ新しい電子部品への応用が期待される。従来にない新しい特性を持つ機能材料であることから,今後新たな有用な用途が開発されるとしている。