名古屋大学の研究グループは,鳥類の脳内で直接光を感知して,繁殖活動の季節変化を制御する脳深部光受容器を同定した(ニュースリリース)。 哺乳類以外の脊椎動物が脳深部で光を感知することは,100年以上前から知られていたが,脳深部光受容器の実体は明らかにされていなかった。
今回の研究では,スライスパッチクランプ法という方法を用いて,「オプシン5」という光受容蛋白質を発現している脳脊髄液接触ニューロンの光応答性を検討した。その結果,光の照射によって細胞が興奮する(活動電位が発生する)ことが明らかになった。
また,この細胞に発現している「オプシン5」の働きを阻害すると,脳に春を告げる「春告げホルモン」の誘導が抑制された。これらの結果から,オプシン5を発現する脳脊髄液接触ニューロンが脳の中で春の訪れを感知して,繁殖活動を制御する脳深部光受容器であることが明らかになった。
今回の研究で,この光受容器が季節繁殖の制御に関わることが明らかになった。この研究の成果は眼や光受容器の進化という観点から興味深いだけでなく,将来動物の生産性の向上に貢献することも期待されるとしている。
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