東大,現行リチウムイオン電池の7倍のエネルギー密度を可能にする二次電池を開発

東京大学の研究グループは,日本触媒との共同研究により,現行のリチウムイオン電池の7倍もの高エネルギー密度を可能とする,酸化物イオンと過酸化物イオンの間の酸化還元反応を利用した新原理の二次電池システムの開発に成功した(ニュースリリース)。

電気エネルギーを貯蔵可能な二次電池はモバイル機器向けの小型用途だけでなく,電気自動車用や定置用の大型用途の需要が高まり,エネルギー密度,容量に加えて,安全性,寿命,コストの面でも高性能化が要求されている。

研究グループは,遊星ボールミル装置を用いて,酸化リチウムの結晶構造内にコバルトを添加した物質を正極活物質として用いることによって,酸化物と過酸化物の間の酸化還元反応が可逆的に進行する電池システムを実証した。

充電反応時に正極中に過酸化物が生成すること,放電反応で正極中の過酸化物が消失すること,その反応が繰り返されることを過酸化物の定量的な分析により明らかにした。また,可逆な充放電が可能な範囲では酸素発生や二酸化炭素発生の副反応が進行していないことも確認した。

実証試験に用いたこの正極は,容量200 mAh/gの繰り返し充放電が可能で,大電流による高速な充放電にも対応できることが確認された。今回用いた正極は現行のリチウムイオン電池で用いられているコバルト酸リチウムと比べてコバルトの重量比が小さく,原料費の低下が期待できる。

この原理の電池は従来のリチウムイオン電池の性能の限界を超える高エネルギー密度,大容量を実現可能なものであり,密閉型構造のため高い安全性やコバルト使用量の低減による低価格化も期待される。

これらの特長を有するこの電池は,電気自動車用の移動型二次電池,電力供給安定化のための定置型二次電池としての実現が期待でき,拡大する二次電池市場の主役となりうるものだとしている。

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