産業技術総合研究所(産総研)は,ディーゼル排ガス酸化触媒に含まれる白金族の使用量低減に有効な触媒調製法(表面ポリオール還元法)を開発した(ニュースリリース)。
白金は排ガス浄化用や化学工業用の触媒や電子機器部品などに広く利用されており,特に,自動車排ガスの浄化触媒が白金需要の半分近くを占めている。今後,新興国における自動車排ガス規制の強化と世界的な自動車数の増加が見込まれており,白金を多量に用いるディーゼル酸化触媒の白金使用量を低減することが喫緊の課題となっている
産総研は,白金-パラジウム(貴金属)ナノ粒子触媒を大量製造するためのプロセスとして,表面ポリオール還元法を開発した。具体的には,まず,貴金属塩の水溶液に少量のポリオール還元剤(エチレングリコールなど)を加えた混合水溶液に触媒担体であるアルミナ粉末を含浸させたのち,この懸濁液を加熱して乾燥粉末にする。
次に,この粉末を窒素気流中で加熱すると,粉末表面に残存するポリオール還元剤により,ポリオール還元反応が進行し,貴金属塩が貴金属ナノ粒子として担体表面上に析出する。最後に,この粉末を高温で加熱して,残存するポリオール還元剤などを燃焼除去すると,貴金属ナノ粒子担持触媒が調製される。
このようにして調製した触媒を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果,アルミナ粉末表面に粒子径の揃った白金ナノ粒子(3nm程度)が直接析出していることを確認した。今回開発した触媒調製法は,従来の実用触媒の製造プロセスに近いことから,実用化に求められる大量製造も可能と考えられる。
さらに,この表面ポリオール還元法により調製した触媒は,白金-パラジウムを50%低減させているにもかかわらず,従来法で調製した触媒と同等以上の炭化水素浄化性能を示した。これは,今回の調整法では,含浸法触媒よりも高温による貴金属粒子のシンタリング(焼結による粒成長)が抑えられ,触媒反応に必要な貴金属粒子の表面積を維持できるためであると考えられる。
また,耐熱性向上は,白金-パラジウム複合ナノ粒子がシンタリングの影響を受けにくいサイズの粒子径であることと,白金とパラジウムの合金化によるシンタリング抑制効果とによると考えられる。
今回開発した技術は,耐熱性の高い貴金属ナノ粒子担持触媒の大量製造への道を開くもの。この技術により調製した触媒をディーゼル酸化触媒として用いることができれば,耐熱性向上による貴金属使用量の大幅な削減が期待できる。