農工大,微生物を用いた磁気微粒子の合成法を開発

東京農工大学の研究グループは,磁性細菌の磁気微粒子合成に関わるタンパク質を解析し,これまでに知られていなかった結晶の形態制御メカニズムを明らかにした(ニュースリリース)。さらにこのメカニズムを遺伝子工学的に利用し,新しい形態の磁気微粒子が合成できることを示した。

磁性細菌とは川や海などに生息し,大きさが数十~100nmの酸化鉄磁気微粒子を合成する細菌の総称。細胞の中に磁気微粒子が一列に整列していることから,磁場に応答する性質を持っている。

研究グループは,ナノサイズの酸化鉄磁気微粒子を合成する磁性細菌をモデルとして,結晶の形態制御機構の解明に取り組んだ。特に,磁気微粒子の結晶表面に局在する4つのタンパク質に着目してそれぞれの遺伝子欠損株を作製し,タンパク質の機能解析を行なった。

遺伝子欠損株の解析から,4つのタンパク質は全て酸化鉄の結晶の成長に関わることを明らかにした。また,それぞれのタンパク質が促進する結晶成長の方向や結晶表面が異なることがわかった。

この結果から,磁性細菌の細胞内では,これらのタンパク質の発現バランスによって磁気微粒子の大きさと形態が決められていることが考えられた。さらに,このような遺伝子欠損株は,人工的に化学合成することが困難なロッド状の形態や,これまで報告例のないダンベル状の磁気微粒子を合成することがわかった。

これらは,形態の制御された高品質な磁気微粒子を大量生産し,医療分野での治療・検査処理の試薬,磁気記録媒体の材料,ポリマー合成の触媒などに応用することが期待される成果。