理化学研究所と東京工業大学,およびアイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリンは,大規模グラフ解析(互いに関連性のある複雑なデータの分析)に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ランキングであるGraph500において、スーパーコンピュータ「京」による解析結果で第1位を獲得した(ニュースリリース)。
近年活発に行われるようになってきた実社会における複雑な現象の分析では,多くの場合,分析対象は大規模なグラフ(節と枝によるデータ間の関連性を示したもの)として表現され,それに対するコンピュータによる高速な解析が必要とされている。「Graph500」は,こうしたグラフ解析の性能を競うことを目的として,2010年から開始されたスパコンランキング。
TOP500では,規則的な行列演算である連立一次方程式を解く計算速度でスーパーコンピュータを評価しているが,Graph500ではグラフの幅優先探索(1秒間にグラフのたどった枝の数)という複雑な計算を行なう速度で評価されており,計算速度だけでなく,アルゴリズムやプログラムを含めた総合的な能力が求められる。
今回Graph500の測定に使われたのは,「京」が持つ88,128台のノードの内の65,536台で,約1兆頂点,16兆枝から成る大規模グラフに対する幅優先探索問題を0.98秒で解くことに成功した。ベンチマークのスコアは17,977GTEPS(ギガテップス)。
これは,「京」が科学技術計算でよく使われる規則的な行列演算によるだけでなく,不規則な計算が大半を占めるグラフ解析においても高い能力を有していることを実証したものであり,幅広い分野のアプリケーションに対応できる「京」の汎用性の高さを示すもので,同時に高いハードウェアの性能を最大限に活用できる研究チームの高度なソフトウェア技術を示すものとも言える。
「京」はこれまでも5,524GTEPSの性能を達成しており,第4位に位置づけられていたが,今回「ポストペタスケールシステムにおける超大規模グラフ最適化基盤プロジェクト」研究チームによってアルゴリズムおよびプログラムの改良が行なわれ,大幅な性能向上を達成することができた。