KASTら,光触媒+プラズマでたばこの臭気成分をほぼ除去できる空気清浄機を開発

神奈川科学技術アカデミー(KAST)の実用化実証事業光触媒グループは,インパクトワールドとともに,たばこの煙に含まれる臭気成分などをほぼ除去できる空気清浄機(実証試作機)の開発に成功した(ニュースリリース)。

今回開発に成功したのは,インパクトワールドの独自プラズマ技術「PACT」と,KASTの光触媒技術を組み合わせた空気清浄機で,以前に開発した空気清浄機を改良したもの。運転コストの低減と,長期使用に耐える実用的な空気清浄機の開発を目指した。

心臓部の浄化ユニットの形状をコイル型にすることで,圧力損失が低下し,運転コストは約半分になった。また,実際の分煙室を想定したブースでの試験でたばこの煙の臭気濃度,浮遊粒子状物質濃度,揮発性有機化合物濃度を,ワンパス(1回通風)でそれぞれ98,99,95%除去できた。また,たばこの煙を連続して処理させる長期耐久性試験を実施したところ,12000本分の煙を処理後(一般的な喫煙室で半年分に相当)も,各濃度の除去率は90%近い値を維持していた。

たばこの煙の成分は大きく分けて,粉塵とガスに分けられる。粉塵はHEPAフィルタの通風で除去が可能。一方,ガスは,2000種類を超える化学物質が含まれると報告され,特にアンモニア,酢酸,アセトアルデヒド等の臭気ガス成分は,従来の空気清浄機では除去が困難だった。

これまでも,光触媒やプラズマ発生装置を単独で組み込んだ空気清浄機は製品化されてきたが,臭気ガス成分の除去に関しては,分煙を可能とし得るまでの性能を持つ製品は,業務用・家庭用ともにほとんどなかった。

研究グループは今回,光触媒とプラズマのそれぞれが持つ有機物の分解性能を,相乗的に引き上げる空気清浄機の開発に取り組んだ。具体的には,プラズマ発生装置内に,光触媒フィルタ(ユーヴィックス製。KASTとの共同開発による製品)を波状に配置することで,光触媒効果を高めた。

従来,空気清浄機の脱臭性能評価は,(社)日本電機工業会規格 JEMA 1467に則り,1m3のボックスにたばこの煙を充満させ,アンモニア,アセトアルデヒド,酢酸の3つの濃度のみ測定するのが一般的。一方,今回の実験結果は,実際の喫煙環境に即した性能評価を実施し,一定程度狭い密閉空間で何度も循環させる方法ではなく,空気清浄機内を1度だけ通す「ワンパス法」によるデータを学術的に示している。

今回開発に成功した空気清浄機により,例えば,飲食店,パチンコ店,カラオケボックス,雀荘等において,たばこの煙が苦手な利用者などの新たな需要の開拓が可能となることで,新たな需要やサービス産業の活性化の期待が持てるとしている。