原研ら,世界最高磁場を用いてウラン化合物の磁気状態の特異な構造を決定

日本原子力研究開発機構(原研)は,ブラジル カンピーナス大学(UNICAMP),米国 フロリダ州立大学 国立強磁場研究所(NHMFL),米国 ロスアラモス国立研究所(LANL)と共同で,米国フロリダ州タラハシーにあるNHMFLの世界最高磁場45テスラを発生できるハイブリッド磁石を用い,核磁気共鳴(NMR)法により,ウラン化合物URu2Si2に強磁場をかけて出現した磁気状態の特異な構造を決定した(ニュースリリース)。

水分子が0℃になると整列秩序して氷となるように,極低温では固体中の電子も,超伝導状態や強磁性などの秩序状態をとる。ウラン化合物URu2Si2も,極低温で電子が何らかの秩序を形成することは判明していたが,その電子の状態が電気的なものなのか,磁気的なものなのか,全く分かっておらず,研究者の間で「隠れた秩序」と呼ばれている。

今回,研究グループは,NHMFLの世界最高磁場を用いて,この電子の「隠れた秩序」状態を変化させて,出現した磁気状態をNMR法により調べた。その結果,強磁場をかけて出現した磁気状態の構造は,ウラン電子のもつ微小磁石の向きかけた方向に対して垂直方向に並ぶ特異な構造であることを初めて発見した。

これはウラン電子が原子核の周りを球対称から歪んだ軌道で運動することで生じる磁性と,ウラン電子のスピンに起因する磁性との相互の影響(スピン-軌道相互作用)により,微小磁石同士の間に,特別な指向性が強く現れたものと言える。

今回の研究成果は,電気や磁気を熱に変換できるような新しい機能をもったウラン化合物を作るための原理の解明につながり,将来の原子力科学の発展に寄与するもの。