阪大,磁場を使って1粒子ごとに分析する方法と測定装置の開発に成功

大阪大学は,ファンデーションやインク,トナーなどの機能性粒子の表面コーティングや成分のばらつきを,磁場を使って1粒子ごとに分析する方法と測定装置の開発に成功した。また,この成果をもとに平成26年5月22日,メンバーらが出資して「株式会社カワノサイエンス」を設立した(プレスリリース)。これはJSTの研究開発課題「世界初の微粒子磁化率計の装置開発と製品化」による成果。

機能性粒子全体の品質のバラつきや機能などを正確に評価するには,粒子ごとの機能を正確に測定する必要がある。従来の粒子分析法では,主に粒径などから機能を評価していたが,同じ粒径でも成分が微妙に違うため,粒子が液体にどの程度馴染むかなどを評価することが難しく,熟練した技術者のカンに頼ることもあった。

今回研究グループは,磁化率という原子ごとに固有の値を持つ物性値に着目。粒子もその原子組成に由来した固有の磁化率を持つため,粒子に磁場をかけて磁化率を測定することで,粒子に吸着した溶媒や,表面に施したコーティングなどを評価することに成功した。

また,この方法では,粒子ごとの成分均一性も評価できることから,粒子製品の製造工程において,粒子材料の投入段階から品質のばらつき検査に応用することで,歩留まりを改善したり,粒子素材の受入検査に用いることで,より均一性の高い材料を選別して品質の安定性を向上させることが可能となる。また,新たな粒子機能の解明や新素材,高機能粒子の開発などに寄与することが期待される。

設立会社は今後,受託解析事業から開始し,その後測定装置の販売を行なう計画で,3年後に1億5千万円の売り上げを目指す。測定対象は,金属粒子といった原料から,太陽光パネル材料などの中間材料,そしてファンデーション,食品添加物などの複合材料など,粒子原料から製品段階までの広い範囲で,研究開発や品質管理における革新的な分析ソリューションの提供を目指す。