NTTは,見る角度により1台のディスプレイで異なる3種の映像を観ることができる「多指向映像スクリーン」を開発した(プレスリリース)。例えば観光地におけるデジタルサイネージとして,異なる言語による案内表示を1台で可能にする「多言語観光サイネージ」などへの応用を見込む。
このディスプレイは3台のプロジェクタを内蔵しており,角度によってそれぞれの映像を観ることができる。映像の指向性はNTTが東北大学と開発したスクリーンによって光学的に作り出されている。
このスクリーンはフレネルレンズフィルム,レンチキュラーレンズフィルム,拡散フィルムを組み合わせたもの。市販のものを利用しており,レンチキュラーレンズのピッチは数百nmだとしている。また,通常のスクリーンと違って観察する領域に光を集める役割も果たすので,光が拡散せずに画面が明るいのも特長だ。
以前にもカーナビの画面を二方向に分解し,ドライバーではカーナビ画面を,助手席ではテレビ画面を見られるタイプのディスプレイが市販されたことがあるが,これは水平方向の解像度が半減することに加え,最適な位置以外からだと画面がうまく見えなくなるといった弱点があった。
今回開発したスクリーンは,映像ごとに対応するプロジェクタの画面を映し出すため,解像度を犠牲にすることがない。また,1画面あたり約30°の視野角を確保しており,さらに画面から離れても映像を観ることができるので,サイネージとして利用する場合,多くの人々が同時に画面を見ることができる。
この装置はアイデア次第で多くの使い道が考えられ,NTTでも多言語観光サイネージの他に,博物館やスポーツのパブリックビューイング,スポーツでのフォームチェック,ゲームなど,様々な応用を提案しながら,さらなる応用を市場に求めたい考えだ。
NTTは実際にこの装置を実験的に成田空港に設置したところ,高い足止め効果を得ることができたという。既に高い完成度にあることから,同社では2014年度中の商品化を目指すとしている。