東大ら,糖尿病や高血圧などを引き起こすクッシング症候群の原因となる遺伝子変異を発見

東京大学および京都大学の共同研究チームは,ACTH 非依存性クッシング症候群の半数以上においてPRKACA 遺伝子の変異が生じていることを明らかとし,さらにこの変異によって副腎腫瘍が持続的にコルチゾールを産生するメカニズムを解明した(プレスリリース)。

クッシング症候群は,副腎から持続的かつ過剰にコルチゾールが分泌されることにより,糖尿病や高血圧など多彩な症状を引き起こす疾患。このうち副腎腫瘍が,脳下垂体からの制御に従わず勝手にコルチゾールを産生するタイプを,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)非依存性クッシング症候群と呼ぶが,これまでその原因は分かっていなかった。

研究チームは,ACTH 非依存性クッシング症候群をきたした副腎腫瘍を対象として遺伝子変異解析を行ない,半数以上の症例に生じている遺伝子変異を同定した。さらに,変異した遺伝子の機能の変化を明らかとすることにより,コルチゾールが持続的に産生されるメカニズムを解明した。

具体的には,PRKACA 遺伝子の変異により,ACTH 非依存性クッシング症候群のうち半数以上の症例では,PRKACA 遺伝子が変異することにより,調節サブユニットによるPRKACA の抑制が不可能となるため,ACTHの刺激によるcAMP 濃度の上昇がなくても持続的にコルチゾールの産生が促されるものと結論付けた。

この研究の成果から,今後の研究によりACTH 非依存性クッシング症候群の新たな診断方法や治療法の開発が進んでいくことが期待される。