東大とNHK,物体の硬さと形状を非接触で測定して触感覚を伝達するシステムを開発

東京大学の研究グループと日本放送協会(NHK)は,物体と接触することなくその形状と硬さの両方を測定し,物体を触った感覚を仮想的に再現できるシステムを共同で開発した(プレスリリース)。これまで,物体表面の硬さを測定するためには,計測装置を表面に接触あるいは近接させる必要があり,離れたところから硬さを測定することはできなかった。

2011年に東京大学の研究グループは,超音波を物体の表面に当てることによって生じた表面の変形をレーザで計測する装置を開発し,物体に触れることなくその硬さ分布を測定する技術を開発した。具体的には超音波を発生する多数の素子を配列し,各素子の振動位相を自在に制御できる超音波フェーズドアレイを用いて物体表面の1点に超音波を収束する。

超音波の収束点では音圧が非常に大きくなるが,そのような強い超音波が照射される部位には,超音波のエネルギー密度に比例した放射圧と呼ばれる力が発生する。その放射圧の大きさを変化させることで物体の表面を微小変形させ,その変形量をレーザ変位計で計測することによって硬さを推定する。

超音波の収束点やレーザの計測点は容易に素早く移動(走査)させることができるので,表面全体の硬さ分布を短時間で計測することができる。また,物体表面に直接触れることがないので,壊れやすい表面や生体の表面なども計測できる。

今回,東京大学の研究グループが開発した物体に接触することなく硬さ分布を測定できる装置を改良し,2013年にNHKが開発した,硬さ分布データに基づいて,指先の複数点に刺激を与えることで,物体を触った感覚を再現する触・力覚ディスプレイを組み合わせることで,触感の計測・提示システムを完成した。

将来的には,視聴覚だけではなく食べ物や生き物などの触感覚までも伝達でき,障害者や高齢者にも分かり易く情報を伝える放送技術につながると期待される。