東京医科歯科大ら,難治性スキルス胃がんの治療標的候補となる活性化遺伝子変異の同定に成功

東京医科歯科大学と東京大学及び大学院医学系研究科 人体病理学・病理診断学分野らの研究グループは,難治性がんであるスキルス胃がん(びまん性胃がん)のゲノムシーケンシングを行ない,新規創薬の標的候補となるRHOA遺伝子の活性化変異を同定した(プレスリリース)。

この研究ではスキルス胃がん組織からゲノムDNAを取り出し,次世代シーケンサを用いてゲノム中のタンパク質をコードする部分(エクソン部分)の全配列を決定した(全エクソーム解析)。

その結果,スキルス胃がん症例の約1/4(87症例中22症例:25.3%)にRHOA遺伝子の体細胞変異が存在することがわかった。RHOAは細胞運動・増殖制御に関わるシグナル分子であり,スキルス胃がん症例で見つかった体細胞変異はRHOA分子の特定の部位に集中している。

複数の検証実験の結果RHOA遺伝子の変異は機能を獲得した活性化変異であり,スキルス胃がんの重要な原因であるドライバー変異であることが分かった。この変異したRHOA遺伝子の機能を阻害することにより,がん細胞の増殖が大きく低下することも確認されている。

この研究成果は,世界的にもがんの死亡原因の主要な位置を占めるスキルス胃がんにおけるがんゲノムの概要を,世界に先駆けて明らかにしたもの。またこれまで有効な治療標的のなかったスキルス胃がんに対して治療標的の候補となるドライバー遺伝子変異を同定したことは,がん治療の進展に向けて社会的にも重要なものとなる。