基礎生物研、精子幹細胞は異なる状態を繰り返し行き来することを発見

基礎生物学研究所助教の原健士朗氏と教授の吉田松生氏の研究グループは、英国ケンブリッジ大学、京都大学、神戸大学、理化学研究所、東北大学との共同研究により、マウスをモデルとして、精巣の中の生きた精子幹細胞の知られざる性質を突き止めた。(ニュースリリース

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今回の研究の結果、定説となっていたAsモデルと異なる精子幹細胞の性質が明らかになった。まず、蛍光標識した精原細胞を数日間観察し続けたところ、「As細胞」が細胞分裂する時には、ほぼ全ての場合「合胞体」になること、一方、「合胞体」は細胞分裂に匹敵するくらいの高い頻度でバラバラに断片化して、新たな「As細胞」が生まれることを発見した。

次いで、延べ8000時間を超えるライブイメージング映像から精原細胞の挙動をまとめたところ、「As細胞」と「合胞体」は、細胞分裂と断片化によってお互いの状態を行き来していることが示された。さらに、数理モデル解析によって、1年以上続くマウス精子形成は、ライブイメージングで観察された「As細胞と合胞体の細胞分裂と断片化」の繰り返しによって支えられていることが強く示唆された。

以上の結果から、「精子幹細胞は、タイプの異なる細胞(As細胞と合胞体)がお互いの状態を繰り返し行き来しながら、どちらも区別なく幹細胞として機能する」という新説を提唱した。

この研究は、マウスをモデルとして、これまで誰も知り得なかった精子幹細胞の性質を明らかにしたもので、この成果を基盤として、今後、ヒトをはじめ他のほ乳動物の精子幹細胞の実体が解明され、将来的に男性不妊の原因究明や治療薬の開発などに貢献することが期待される。