産総研、液晶を用いた気体分子のキラリティの簡便な検出法を開発

産業技術総合研究所(産総研)の大園拓哉氏らは、微細なしわ(マイクロリンクル)状の溝に閉じ込められた液晶中に自発的に形成された周期的な液晶配向構造が、気体試料中のキラリティ(掌性)を持つ光学活性分子とその利き手の検知に利用できることを発見した。(ニュースリリース

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今回開発した技術は、液晶に溶け込んだ気体分子のキラリティに応じて、マイクロリンクル中の液晶の配向構造が変わる新しい現象を利用したもので、構造変化は液晶に気体試料を吹き付けるとすぐに起こり、偏光顕微鏡だけで容易に観察できる。このため、微量の気体試料中のキラリティを常温常圧下で迅速に評価できるセンサーシステムを容易に構成できる。よって、香料などの揮発性化学品分析、環境モニタリングなどへの応用が期待される。

開発した気体のキラリティ検出法の特徴は以下の通り:
(1)センサ部は、自己組織化で作製できるマイクロリンクルに、ディスプレイなどに広く利用されているネマチック液晶を塗布するだけで、非常に安価に作製でき、
(2)測定気体試料を、濃縮や熱処理せずに、常温、常圧、通常湿度条件下で、直接センサ部に吹き付けられるため、操作手順の簡便性に優れ、
(3)偏光顕微鏡だけで視覚的に検知でき、鋭敏色板の利用でパターン変化がさらに明確化でき、
(4)数秒以内の速い応答時間を示し、
(5)ほとんどの場合、溶け込んだ分子は再蒸発し、液晶配向構造自体も、少なくとも数カ月間は安定であるため、センサ部の再利用も可能。

このキラリティ検出法は、野外でも使用可能な、簡便かつ経済的な気体試料のキラリティセンサとして利用でき、また、液晶における欠陥構造の新たな応答性を利用した原理に基づいており、外的な刺激に容易に応答するソフトマテリアルの特徴を巧みに利用したもの。