理研とJASRI,円偏光したX線自由電子レーザの生成に成功

理化学研究所(理研)と高輝度光科学研究センター(JASRI)は,X線自由電子レーザ(XFEL)施設「SACLA」に,X線レーザ光(XFEL光)の偏光を自在に制御するための装置を導入した。これにより,円偏光したXFEL光の生成に成功し,超高速な磁気現象やキラル物質の研究に適したXFEL光が利用できるようになった(リリース)。

XFEL光は水平方向に振動する電磁波(直線偏光)だが,振動方向が螺旋のように回転する(円偏光)XFEL光を発生できれば,磁性体の磁気の源である電子スピンの動きや,生体中のキラル物質の構造や動きを,1ピコ秒より速い時間スケールで測定することが可能となる。

共同研究グループは,XFEL光を人工ダイヤモンド結晶の素子に透過させ,円偏光を作り出すことに成功した。ダイヤモンド結晶の角度を変化させることで,螺旋の回転方向(右回りと左回り)を高速(100 Hz)に切り替えることが可能。これにより,現在の100倍もの高速で情報の読み書きが行なえる磁気記録メモリ開発などへの応用が期待できる。

円偏光したXFEL光の発生は,海外の他のXFEL施設ではまだ行なわれていない。XFEL光の発生源であるアンジュレータを改造することで円偏光を発生する方式が提案されているが,研究ではダイヤモンド結晶素子というコンパクトで比較的安価な装置によって,高い純度の円偏光X線を効率よく発生させたことが大きな特色。今回の成果により,SACLAが磁性体やキラル物質の研究分野で世界をリードしていくことが期待できる。