福岡大ら,超新星爆発がニュートリノ加熱によって起こる可能性を発見

福岡大学,国立天文台,京都大学らの研究チームは,スーパーコンピュータ「京」を用いて超新星爆発の大規模数値シミュレーションを行ない,超新星爆発がニュートリノ加熱によって起こる可能性を示した。 ニュートリノ加熱説とは超新星爆発のプロセスにおいて,中性子星で一度は勢いを失った衝撃波をニュートリノが加熱し,復活させるという説。

image

超新星がどのようなメカニズムで爆発するのかは,複雑な高エネルギー現象が絡みあうため,天文学者を50年も悩ませている難問。ニュートリノ加熱説は有力ではあったが,これまでは星の形状を完全な球と仮定するなど,現実の超新星爆発とは異なる設定のシミュレーションしか行なえなかったため,それが正しいかどうかの議論を進める事ができなかった。

2000年代前半はニュートリノ加熱説を,星の形状を1次元とする仮定で計算を進めていたが,どうしてもニュートリノ加熱説では超新星爆発を起こすことができなかった。計算機の能力が向上した2000年代後半には,星が回転楕円体のような形状をしていると仮定する2次元の計算を行なえるようになった結果,爆発するモデルが発見された。ただし,2次元の計算はやはり自然とは異なった仮定であるため,3次元計算による研究が待たれていた。

今回,スーパーコンピュータ「京」を用いることで,かつてないほどの大規模なシミュレーションが可能になった。そのため,より現実に近い設定で超新星爆発の計算を行なうことができるようになった。この結果,ニュートリノによって加熱されることで対流が起こり,対流がさらに加熱を促進することで衝撃波が成長するというメカニズムによって,超新星が爆発する様子をスーパーコンピュータの中に作り出すことができた。これは二ュートリノ加熱説で超新星が爆発する強力な証拠。

ただし今回の計算では,超新星の観測からわかる典型的な爆発エネルギーの10分の1程度の爆発しか再現できていない。また今回は,太陽の11.2倍の重さという超新星を起こす星の中では比較的軽いものについて計算した。より重い星でも爆発の証拠が得られるのかなど,今後調べることは多くあるが,今回の成果は,そうした研究のファーストステップとなるものだとしている。

詳細は CfCA ニュースリリースへ。

WordPress for Android から投稿