理研ら,最後の時計遺伝子を発見

理化学研究所(理研),広島大学,米国ミシガン大学は共同で,哺乳類の概日リズムをコントロールする新たな時計遺伝子「Chrono(クロノ)」を、ゲノムワイドかつ網羅的な解析によって発見した。昼夜の転写活性の振幅が大きいという時計遺伝子の特性を強くもつ遺伝子であり,他の時計遺伝子の発現様式がすでに明らかになっていることから,最後の時計遺伝子と目される。

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地球上のほぼすべての生物には,24時間周期で繰り返される概日リズムが存在し,この体内時計によって睡眠や覚醒,ホルモンの分泌、血圧・体温調節などの生理活動が制御されていることが知られている。

概日リズムの異常は,時差ボケや睡眠障害などのリズム障害を引き起こすだけでなく,がんや生活習慣病,精神疾患などにも関わるとされている。概日リズムの分子機構は時計遺伝子(概日リズムに関わる遺伝子群)の転写翻訳フィードバックループ(TTFL)に基づいていることが知られているが,その全容は明らかになっていなかった。

共同研究グループは,クロマチン免疫沈降法と次世代シーケンサを組み合わせた解析法などを使った網羅的解析を行ない,哺乳類にのみ存在する新たな時計遺伝子を発見した。共同研究グループはこれを「Chrono(クロノ)」と命名。また,クロノは時計抑制因子として概日リズム発振を担うこと,ストレス刺激などによる代謝変動に関わることを明らかにした。

この研究によって,哺乳類の最後と目される時計遺伝子が同定された。精神機能などの高次機能と概日リズムとの関係など,哺乳類の概日リズムの仕組みのさらなる解明が期待できる。

詳しくは理研 プレスリリースへ。