産総研ら,有機太陽電池においてp-n接合界面が「汚い」方が性能に優れることを発見

産業技術総合研究所(産総研),筑波大学,物質・材料研究機構,高エネルギー加速器研究機構,広島大学らの研究グループは,軟X線顕微鏡を用いて有機太陽電池のナノ構造を調べ,それぞれの分子領域内で分子が混合していることを発見した。この発見により,有機太陽電池のエネルギー変換機構が明らかになり,高効率な有機太陽電池の設計指針が得られると期待される。

有機太陽電池は,従来,有機電子供与体(有機p型半導体)と有機電子受容体(有機n型半導体)を層状に接合した構造(p-nヘテロ接合)が用いられていたが,近年,これら2つの材料を混合して作製するバルクヘテロジャンクション型のものが開発され,エネルギー変換効率の高さから,次世代太陽電池として期待されている。

このタイプの太陽電池が高いエネルギー変換効率を示す理由としては,電子供与体である高分子材料と電子受容体であるフラーレンとのナノドメインが接合することにより,大きな接合面を持つためと考えられていた。しかし,実際に各分子領域内の構造を調べた報告例は極めて少なく,特に,熱処理条件を変えてエネルギー変換効率を最適化した混合膜において,接合状態などの詳細は明らかにされていなかった。

研究グループは,高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーの軟X線顕微鏡を用い,周期的なナノ分子領域が形成されやすい組み合わせとして,電子供与体である高分子に液晶性共役高分子であるF8T2,電子受容体にフラーレンPC71BMを用いて混合分子膜を作成しドメイン構造を調べた。

その結果,高いエネルギー変換効率を示す混合分子膜では,フラーレン領域と高分子領域でお互いが混入していることが分かった。つまり,界面はむしろ「汚い」ほうが電池としての性能が優れる,ということが初めて分かり,これまでの常識を覆す結果が得られた。

この研究より,バルクヘテロジャンクション型有機太陽電池のエネルギー変換効率には,分子混合が重要な役割を担っていることが明らかになった。さらに,軟X線顕微鏡の偏光依存性を調べることにより,高分子領域とフラーレン分子領域との界面における分子配向が明らかにできると期待できる。

詳しくは産総研 プレスリリースへ。