九大,酸化されたDNAが子孫に伝わる遺伝子を変化させることを発見

九州大学研究のグループは,理化学研究所,長浜バイオ大学との共同研究で,酸化された DNA(8-オキソグアニン)がほ乳類の生殖細胞における自然突然変異の原因となることを明らかにした。

これは,DNA の酸化が生殖細胞突然変異を通して一人一人が違った特徴を持つことの遺伝的要因,すなわち遺伝的多様性の原因になるとともに,がんだけでなく様々な遺伝子病の原因にもなることを意味するもの。

研究チームは,酸化によってDNA 中に生じた8-オキソグアニンを除去,修復できないように遺伝子を改変したマウスを用いて,DNA 中に自然に蓄積した 8-オキソグアニンに起因する突然変異を解析した。8-オキソグアニンは,DNA を構成する塩基のひとつで,グアニンが酸化されて生じる。

さらにこの遺伝子改変マウスを8世代まで交配を続けて,家系内の各世代で新たに生じた変異を蓄積させ,最も世代の進んだ個体の DNA 配列を解析することで,発生した変異を効率的に検出することを可能にした。

このマウスの家系では,子孫に水頭症や特殊ながんの発生,毛色の変化など遺伝性の表現形質の変化が観察された。研究グループは,生殖細胞突然変異が最も蓄積していると考えられる3匹のマウスを選択し,その DNAを次世代シーケンサーを用いて解析した。

その結果,このマウスでは 1 世代当たりの生殖細胞突然変異発生率が野生型マウスと比較して約 18 倍上昇していることが分かった。見つかった変異の 99%は 8-オキソグアニンに起因する G-T トランスバージョンという種類の突然変異で,その約60%は遺伝子の機能に影響を与えるものだった。

これまで生殖細胞の遺伝子を変化させる自然要因についてはよくわかっていなかった。8-オキソグアニンは,ほ乳動物の生殖細胞において自然突然変異の原因となることが示された初めての分子となる。

詳しくは九州大学 プレスリリースへ。