東北大,動脈硬化症を促進する新しい病原体を発見

東北大学大学院医学系研究科教授の赤池孝章氏らは,ヘリコバクター・シネディ(シネディ菌)という細菌の感染が血管細胞への脂肪蓄積を増加させることで,動脈硬化症の進展を促進することを明らかにした。これは,これまで不明であった新しい病原体の持続感染による動脈硬化促進のメカニズムを明らかにしたもの。

動脈硬化症は,血管の内側にコレステロールなどの脂肪が蓄積することにより血液の流れが悪くなる病気で,心筋梗塞,狭心症などの心臓病や脳血管障害など重大な疾患に深く関わることが知られている。

動脈硬化の進展には加齢や食習慣など様々な要因が関わることが知られているが,近年,細菌やウイルスの持続的な感染もその一つと考えられ,解明に注目が集まっている。しかし,これまでどのような細菌やウイルスが,どのようにして動脈硬化を進展させるのか,そのメカニズムは明らかではなかった。

研究グループは,以前より,ヒトの動脈硬化病巣にシネディ菌が感染していることを示唆する知見を得ていたが,今回,動脈硬化症のモデルマウスを用いて,シネディ菌が感染すると,血管への脂肪の蓄積が増加し,動脈硬化症の進展が早まることを世界に先駆けて証明した。

さらに,培養したマクロファージ細胞を用いた実験において,シネディ菌が感染した細胞では,コレステロールを細胞内への取り込むタンパク質が増加し,コレステロールを細胞外へ排出するタンパク質が低下することにより,脂肪の蓄積が増加することを明らかにした。

今回の研究成果は動脈硬化の進展に関わる新しい病原体を発見し,その分子機構を明らかにしたものであり,動脈硬化症の発症・進展のメカニズムの解明に関する画期的な成果。今後,さらに詳細な研究により,ヒト動脈硬化症の新しい予防法・治療法の開発と確立に大きく貢献することが期待される。

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