理研ら,レーザプリンタ開発の要となるトナー粒子とキャリア粒子間の電位分布の解析に成功

理化学研究所(理研)と東北大学,リコーは,微小な絶縁体試料が帯電する様子を詳細に解析できるよう「分離照射電子線ホログラフィー」を改良し,高精細・省エネルギープリンタ開発においてカギとなる,トナー粒子とキャリア粒子]間の電位分布の解析に成功した。

試料の走査電子顕微鏡(SEM)像と分離照射電子線ホログラフィーの模式図

電子線ホログラフィーは,観察箇所を通過した電子波(物体波)と素性の分かっている領域を通過した電子波(参照波)を干渉させ,得られたホログラム(干渉縞)から,試料(空間も含む)のナノメートル領域の電磁場を物体波の波面の変位(位相像)として計測する。

レーザプリンタは1937年に米国でその原理が発明された。しかし,印刷制御の根幹となるトナー粒子とキャリア粒子間の静電相互作用は未だ明らかになっておらず,高精細・省エネルギープリンタ開発のため微小領域における電位分布の解明が求められていた。

共同研究グループは,トナー粒子とキャリア粒子間の静電相互作用を調べるため,球状のトナー粒子がキャリア粒子に静電付着したモデル試料の電位分布を,改良した分離照射電子線ホログラフィーを用いて測定した。

トナー粒子が正の電荷を帯びた正帯電型と負の電荷を帯びた負帯電型について,分離照射法で比較解析したところ,どちらの試料も局所的な電位分布を持つことが分かった。また,トナー粒子とキャリア粒子の接触箇所での電荷のやり取りによる電位分布と,その電場により誘発される分極を示す電位分布の解析にも初めて成功した。

今回の解析により,トナー粒子とキャリア粒子間の引き合うメカニズムが明らかになった。今後,この成果を応用した高精細・省エネルギーレーザプリンタの開発が期待できる。また,他の材料や電子デバイスにおける高精度電磁場計測にも活用が期待できる。

詳しくは理研プレスリリースへ。