NIPSら,目から脳に視覚情報を伝える”第3”の神経経路を発見

シドニー大学と自然科学研究機構 生理学研究所(NIPS)は,新世界サル(マーモセット)の網膜から脳の視床に視覚情報を送る“第3”の神経経路を発見した。これまで霊長類では,2つの経路(視床のM層経由型とP層経由型)が目で見た画像をそのまま脳に伝えていると考えられていた。新しい経路は,視床のK1層を経由し視覚情報の中でも特に“動き”の情報を検出している可能性がある。

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研究グループは,哺乳類の中でもヒトに近い視覚系をもつ霊長類(新世界サル(マーモセット))の網膜に注目。マーモセット網膜への遺伝子導入法を開発し,これまであまり研究されていなかった霊長類の網膜に数少なく存在する神経細胞の可視化に成功した。

この手法および視床の特定の領域に色素を注入する方法を用いて,網膜から視床の特殊な層(K1層)へと情報を伝える,複数の神経細胞のつながりを調べた。その結果,網膜内のDB6双極細胞が網膜の狭棘状細胞(ナロー・ソニー神経節細胞)という神経細胞につながり,狭棘状細胞がK1層へ情報を送っていることがわかった。

K1層には視覚情報のうち“動き”に反応する細胞が多く存在すること,K1層の情報が “動き”の情報処理を行なうMT野にも直接情報を伝えていることから,今回発見した経路は,“動き”の検出に特化した神経経路であることが示唆された。

研究グループは,今回発見した“動き”の検出に関与する神経経路が,目が見えない方の“ブライドサイト”(見えていると意識しないのに、ある種の情報が脳には直接送られている)と呼ばれるような能力に関与しているものと考えられる,としている。

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