NIBBら,光合成反応調節の仕組みであるステート遷移のメカニズムを解明

基礎生物学研究所,スイス・ポールシェラー研究所,ハンガリー科学アカデミー,フランス原子力代替エネルギー庁などの研究グループは,緑藻が光合成反応を調節する仕組み,ステート遷移の機構を明らかにした。

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植物は光合成によって太陽からの光エネルギーを獲得しさまざまな生命活動を支えている。光合成は多くのステップからなる複雑な反応だが,光エネルギーを捉えるステップには,光化学系I,光化学系IIと呼ばれる2つの色素タンパク質複合体(光化学系)が主要な役割を果たす。

この2つの光化学系の連携は光合成反応全体の効率を左右する重要な問題で,そのコンセプトは“ステート遷移”呼ばれ,40年以上前に発見された。その後,多様な光合成生物がステート遷移を行なっていることがわかり,その詳細をめぐっては多くの研究・議論が行なわれてきた。

研究グループは,加速器が作り出す中性子ビームを単細胞緑藻クラミドモナス細胞に当ててその小角散乱を測定し,ステート1では整然としていたチラコイド膜の規則構造がステート2では崩れること,細胞の円偏光吸収スペクトルを調べ,光の“アンテナ”タンパク質LHCIIの結合を含めた光化学系IIの全体構造がステート遷移の前後でほぼ保存されること,そして分光学的測定により光化学系IIの集光能力が大きく低下する一方光化学系Iの集光能力はわずかしか増強されないことを明らかにした。

また,クラミドモナスがステート遷移をおこすとき,光化学系IIに結合しているLHCIIの数は変わらないこと,一方の光化学系Iに結合する数は少数増えることを生化学的に明らかにした。

今回研究グループは,これまでの常識を覆し,“アンテナ”タンパク質の移動が実際にはほとんど起きていないこと,そして“アンテナ”タンパク質の性質が変化していることを明らかにした。これにより,光エネルギーの効率的変換へ向け大きな足がかりが得られたことになる。

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