筑波大,アメーバ状光合成性単細胞生物がガラスの殻を作る様子の撮影に成功

筑波大学生命環境系教授の石田健一郎氏のグループは,有殻アメーバ,ポー リネラ属の1種 Paulinella chromatophora (ポーリネラ・クロマトフォラ)の殻構築を顕微鏡下でタイムラプスビデオ撮影することに成功し,そのプロセスを詳細に観察した。

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ポーリネラは,ため池など水流のほとんどない穏やかな淡水〜汽水環境に棲み,珪酸質でできた壷状の殻をもつ,体長数十ミクロン程度のアメーバ状光合成性単細胞生物。その殻は,50 枚程度の珪酸質の鱗片が順序よく配置された壷状の形をしている。これらの鱗片は,大きさと湾曲の程度、装飾の有無がそれぞれ微妙に異なっており,正しい鱗片が正しい位置に配置されることで,きれいな壷状の殻を形づくっている。しかし培養が難しいことなどから,これまで,この殻がどのように作られるのかはよくわかっていなかった。

研究では,この種の安定な培養株の作成に成功し,その殻構築過程を顕微鏡下でタイムラプスビデオ撮影することで詳細に観察した。その結果,細胞内で形成された 50枚余りの鱗片がまず細胞外に分泌され,その後太い仮足を使って鱗片を1枚ずつ順序正しく積み上げながら新しい殻を構築する様子が観察された。細胞はその後,細胞分裂を行ない,娘細胞の一つが新しい殻に移動する様子も観察できた。

多くの細胞外被(鱗片や殻や細胞壁)をもつ生物は,自身の細胞を覆うために細胞内で鱗片などを形成して細胞外に分泌するが,ポーリネラを含む有殻アメーバの仲間の一部は,娘細胞のために細胞外に完全な殻を構築する特徴があり,その一つについて殻構築過程を詳細に観察できたことは,単細胞生物の営みを理解する上で大きな意味を持つ。

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