名大,空気界面を利用した液晶分子の光配向技術を開発

名古屋大学大学院工学研究科教授の関隆広氏らのグループは,液晶物質の膜と空気の界面に厚さ20 nm 程度の光に反応する超薄スキン層を用いて,空気側から液晶材料膜の分子配向を光で自由に制御する方法を初めて提案した。

液晶分子の配向法は,液晶ディスプレイパネル,光学補償フィルム,光学変換デバイス等の製造において鍵となる重要な技術で,これまでは,固体基板上に設けた配向膜によって液晶分子を並べてきたが,研究グループは,液晶材料と空気との界面に形成された配向膜によって,高分子液晶材料を光によって自由に配向させうる現象を発見した。

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空気側に形成される薄膜は,20nm程度のごく薄いスキン層で十分で,ここで用いる配向膜は光によって液晶材料を配向させうる光配向膜であり,偏光照射によって,自由にその液晶分子の方位を定めることができる。また,その配向は何回でも光で書き換えができる。

この手法では,液晶高分子を支持する固体基板表面には一切手を加える必要がなく,無機基板だけでなくフレキシブルな高分子フィルムなど,多様な基板を用いることができる。この手法は,高分子液晶材料に少量の光配向能をもつブロック共重合体を混ぜ,これを熱処理するだけで空気側にこのスキン層を偏析させる。また,インクジェットプリンタを用いれば空気側に膜を描画して,光配向をさせることもできる。この場合,観測する偏光板を回転させれば,描いた画像が出現したり消えたりを繰り返す。

今回の技術は,空気側の表面だけを工夫すればよく,液晶高分子の薄膜を作成した後に,自由にカスタマイズして液晶配向を描画できることが特徴。この手段は今までの液晶材料の配向法にはなかったものであり,操作が単純なだけに,液晶材料の応用が多様に広がることが期待される。

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