三菱化学,有機TFTで世界最高レベルの電荷移動度を達成

三菱化学と米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)は,2001年にUCSB内に三菱化学先端材料研究センター(MC-CAM)を設置し,先端機能材料分野における画期的な新材料,デバイス,加工・解析技術等の研究開発を行なってきたが,今回,高分子材料を用いた有機薄膜トランジスタの研究開発において,世界最高レベルの電荷移動度を達成したと発表した。

薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor :TFT)は,主に液晶ディスプレイなどの画素スイッチとして用いられ,現在はシリコン系半導体材料(多結晶シリコンTFT及びアモルファスシリコンTFT)が広く使われている。

しかし,多結晶シリコンTFTは一般に電荷移動度が高いものの,多結晶であるために均一性に乏しく,製造設備の制約により大面積化が困難であった。一方,アモルファスシリコンTFTは,プロセス温度が約400℃と多結晶シリコンTFTよりも低く,均一性が高いため大面積化が可能だが,電荷移動度が低く,有機ELをはじめとする次世代ディスプレイ(要求される電荷移動度の目安は10 cm2/Vs)に用いるには不十分だった。

また,多結晶TFT,アモルファスTFTのいずれも400~600℃での熱処理が必要なため,基板にポリマーを使用するフレキシブルデバイスへの適用が困難という欠点があった。

一方,有機TFTは,有機物の特長としてシリコン系TFTよりも柔らかく塗布による低温での製造プロセスが可能で,大面積でフレキシブルなデバイスがより安価に作製可能になると期待されているが,実用化にあたっては電荷移動度が課題とされていた。

今回MC-CAMでは,デバイス作製技術,高分子材料設計と合成技術,およびデバイス解析技術を組み合わせ,チームとして改良を重ねることにより,23.7 cm2/Vs という世界最高レベルの電荷移動度を達成した。

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