富士通,ジェスチャを認識する産業向けウェアラブルデバイスを開発

富士通研究所は,保守作業などの現場向けにNFC(Near Field Communication)タグリーダとジェスチャ入力機能を備えたグローブ型ウェアラブルデバイスを開発した。

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開発したウェアラブルデバイス

このデバイスを用い,作業者が指に装着したNFCタグのアンテナからタグの情報を読み取ると,スマートフォンなどのICT機器を介してクラウドや指令センターなどから必要な情報を入手することができきる。さらに,ジェスチャーによって,タブレット等のデバイスに触れずに入力操作もできるので,作業の流れを止めることなく,点検などを行なうことが可能になる。

このデバイスは,NFCタグのアンテナ,NFCタグリーダ,ジャイロセンサ,加速度センサ,バッテリーから構成される。NFCタグリーダは電力消費量が大きいという問題があったが,タグの情報を読み取るときだけ起動することで,電源を入れたままの3倍となる,9時間の連続稼働を実現した。

またジェスチャ認識は,手の甲を上に反らす「背屈」の動きをスイッチで検出したときのみ行なう。人は通常の作業中に背屈をあまり行なわないといい,意識して背屈を行なった場合と,作業中に流れの中で生じる背屈とでは,角度にして15度以上の差があるという。ことを利用し,作業の動きとジェスチャを区別する。

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手首の上部に「背屈」を検出するスイッチが見える

認識するジェスチャは,手を上下左右に動かした場合と,左右にひねった場合の6種類。いずれも背屈状態を保ったまま行なうことで認識する。これらの動きは個人差が少なく,認識率98%以上を実現している。

発表では具体的な利用シーンとして,パネルの点検作業のデモを行なった。各メータや表示灯に貼られたNFCタグを,デバイスを装着した作業員が指先のアンテナで触れると,それぞれの点検基準がダウンロードされ,装着したイヤホンから点検の判定基準が提示される。これをもとに点検を行ない,判定がOKならば背屈させながら手を右,NGならば左というように,設定したジェスチャをすることで,入力デバイスやノートを取り上げることなく,入力も済ませることができる。

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また,サーバの接続作業のように,さらに複雑な作業であれば,ヘッドマウンドディスプレイなどを利用して,マニュアルなどの必要な情報を画面に出し,画面をジェスチャで操作するといった応用もできる。

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同社は検証を重ねながらこのデバイスを2015年中にも発売したいとしている。得意とするICT分野へこのデバイスをインタフェースとして提供することで,より人間がICTを円滑に利用できる環境を作り出す。またコンシューマ向け製品としてのリリースも,市場の動向を見守ってから判断したいとしている。

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