東レ,単層カーボンナノチューブ薄膜トランジスタで世界最高レベルの移動度を達成

東レは,単層カーボンナノチューブ薄膜トランジスタ(Carbon Nano-Tube Thin Film Transistor :CNT-TFT)において,塗布型TFTとしては世界最高レベルとなる移動度13 cm2/Vs,オンオフ比106 を達成した。これは半導体純度を大幅に高めた単層CNTと独自開発した半導体ポリマーを複合化することにより,単層CNTの高い半導体特性を十分に引き出すことに成功したもの。

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CNTの高い半導体特性を生かすためには,通常の合成方法では半導体型と金属型の混合物となるCNTから,半導体型CNTを高い純度で取り出す必要がある。しかし,これまでは純度が思うように上がらない,または純度は上がるがCNTの品質が低下してしまうという問題があった。また,純度の高いCNTほど凝集する力が強く,均一な分散が困難だった。

同社はこれまで,半導体ポリマーを単層CNTの表面に付着させることで,導電性を阻害することなく単層CNTの凝集を抑制できることを世界に先駆けて見出し,既に単層CNTの均一分散技術の基本特許を出願・権利化している。今回この技術を,TASC(技術研究組合 単層CNT融合新材料研究開発機構)が開発した高半導体純度の単層CNTに展開することにより,高い半導体純度と品質を維持しながら,単層CNTの均一分散を実現した。

これにより,高半導体純度の単層CNTの均一なネットワークをインクジェットなどの塗布方法で形成できるようになり,移動度10cm2/Vsを超える高いTFT特性が可能となった。

また,TFTの実用化に向けては,広い面積に数多く配置されたTFT素子間のバラツキをできるかぎり小さくする必要がある。半導体純度を高める前の単層CNTでは,金属型CNTが電極間を橋渡し(短絡)する確率が高く,素子間バラツキの主原因の一つとなっていた。今回開発した技術で金属型CNTによる短絡確率が大幅に低下したことにより,素子間バラツキを4分の1にまで低減することができた。

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