東大,GaN系ナノワイヤ量子ドットで室温での単一光子の発生に成功

東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構・機構長の荒川泰彦氏と,特任研究員のマーク・ホームズ氏らの研究グループは,位置制御されたGaN系ナノワイヤ量子ドットを用いて,室温(300K=27℃)における単一光子の発生に成功した。

これまでダイヤモンドNV(窒素空孔複合欠損)中心など,単一光子源の室温動作の事例はあったものの,荒川氏によれば,「GaN系材料による位置制御された単一光子源の室温動作は世界初」としている。

単一光子源は1個の光子に情報を載せて量子情報処理を行なう上で,重要なデバイスの一つとなっている。今回の成果は,実用向けデバイスに近いもので,量子暗号通信や量子コンピュータへの応用が期待されている。

この単一光子源の実現でキーとなったのは,(1)GaNナノワイヤを位置制御し,高品質に選択成長させたこと,(2)極細ナノワイヤ上に量子ドットを埋め込んだ小型の構造にしたこと―などだが,これにより,室温動作にもつながったとする。

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図1.GaNナノワイヤ量子ドット像(aは走査電子顕微鏡像、bは透過電子
顕微鏡によるドット部分の透過像、cは量子ドットナノワイヤの概念図)

これまでの研究報告では多くが温度が上昇すると,g(2)〔0〕の値も大きくなっていた。これに対し,開発した単一光子源では300Kでg(2)〔0〕=0.33(0.13)と,室温でも十分な発光を得ることができた。荒川氏は「今後は350Kでの動作を目指す」とし,段階的に引き上げていく考え。さらに現在青紫色の波長帯だが,量子暗号通信を可能にする波長に変換する技術の開発を進めていくとしている。

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図2.単一光子発生の実験データ(cが300Kのデータ)。300Kで
単一光子源としての評価指標g(2)[0]が0.33を示す
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