放医研、放射性セシウムを可視化する“特性X線カメラ”の開発に成功

放射線医学総合研究所研究基盤センター研究員の小林進悟氏らの研究チームは、放射性セシウムを可視化するカメラ“特性X線カメラ”の開発に成功した。

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東京電力福島第一原子力発電所事故により環境中に放出された放射性セシウム等の除染の効率化や、原子炉廃止措置等における放射性物質の分布の把握には、ガンマカメラやコンプトンカメラなどで放射性物質を可視化することが有効な方法のひとつと考えられている。

カメラが広く普及するように、放医研では、従来と比べ大幅に低価格で、重量や感度に対しては少なくとも従来と同程度の性能をもつカメラをコンセプトにし、放射性セシウムを可視化するカメラの研究を進めてきた。そこで、放射性セシウムが発する微弱な特性X線を高感度で検出し可視化する新しい技術を確立し、特性X線カメラの試作機を完成させた。

ガンマカメラやコンプトンカメラは、ガンマ線を検出して放射性セシウムを可視化する。一方で、今回開発した特性X線カメラは、ガンマ線の代わりに、放射性セシウムが放出する特性X線を検出することで可視化する。Cs-137、Cs-134は多くはエネルギーが600-800キロ電子ボルト(keV)のガンマ線を放出するが、32keVの特性X線も放出している。研究チームは、この特性X線はガンマ線と比べると放出量はわずかだが、ガンマ線に比べてエネルギーが低いため、容易に検出したり遮へいしたりできる点に着目した。

特性X線を検出できる検出素子を厚さ数ミリメートルのステンレス等の遮へい材で囲うことでピンホールカメラを構成した。特性X線カメラの特徴は、放射性セシウムからのガンマ線はカメラを透過するようにして、特性X線に対してのみピンホールカメラとして作用するように設計されている点。このため、ガンマカメラのように厚く重い遮へい体や検出素子が必要ないため軽量になり、特性X線だけを捉えて放射性セシウムを可視化できる。

試作機は重量が6.6kgで、現在除染に使用されているカメラ(約10kg以上)に比べて軽量化でき、感度は従来と同程度以上の性能を持つ。一方で、従来のカメラは1000~3000万円だったが、特性X線カメラは大幅なコストダウンに成功し、500万円以下を見込んでいる。

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