大陽日酸,従来の1/1000のカーボンナノチューブでフッ素樹脂を高機能化することに成功

大陽日酸はNEDOのプロジェクトにおいて,カーボン材料とフッ素樹脂の複合材料の製造工程で独自のカーボンナノチューブ(CNT)を用いて,カーボンの添加量を従来の1/1000程度に抑えつつ,導電性・熱伝導性・機械特性を備えた高機能フッ素樹脂を開発した。さらに,簡便かつ低コストの高機能フッ素樹脂製造プロセスを確立したことにより,従来と同等の製造コストも実現した。

1

カーボン材料と樹脂の複合材料は帯電防止のための導電性,成形加工ならびに切削加工時の際に熱膨張を避ける目的で高い熱伝導性などの特性が得られることから,半導体部品,自動車部品など多くの分野での応用が期待されている。

従来技術で最もフィラーとして使われているカーボン材料はカーボンブラック(CB)だが,例えば帯電防止機能を与えるために樹脂にカーボンブラックを5~15wt%程度も添加する必要があり,成形加工不良や樹脂本来のしなやかさが損なわれる問題がある。

また,半導体分野では,カーボン材料の発塵によるコンタミのリスク低減要求が厳しく,カーボン材料の添加量をさらに低減させ,樹脂本来のしなやかさを維持し,かつ発塵リスクの少ない複合材料が求められていた。

今回,繊維長の長いCNT(50~150 µm) とフッ素樹脂(PTFE,平均粒径25 µm)を高度に複合化することで,CNT添加量0.01wt%において帯電防止レベルの導電性2.4×107Ω・cm,CNT添加量0.05wt%において母材樹脂の2.6倍の熱伝導率0.64W/(m・K),CNT添加量0.1wt%において,母材樹脂に比べ11%の曲げ強度・圧縮強度向上を達成した。

今後は確立した高機能フッ素樹脂製造プロセスにおいて,スケールアップ設備を導入し,実証試験を実施すると共に,大陽日酸では2014年10月に,10ton/年の高機能フッ素樹脂のサンプル製造体制を確立し,サンプル販売開始を目指す。

詳しくはこちら。