理研、常温有機強誘電体の分極反転を阻害する要因を発見

理化学研究所は、常温有機強誘電体において、加える電圧の極性の向きに応じて電荷の偏りが反転する「電気分極の反転」を阻害している要因を発見した。これを除去することで、反転可能な電気分極量を5倍以上向上させ、本来の材料特性を引き出すことに成功した。

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強誘電体は、電荷の偏り(電気分極)を持ち、かつ外部電圧の向きに応じて電気分極の向きを反転できる絶縁体。電気エネルギーと機械エネルギーを変換するための圧電素子や電気分極の安定性を利用した強誘電体メモリ(FeRAM)など新たな用途開発が続いています。強誘電体のなかでも、有機強誘電体は有毒な鉛や希少金属を含まない有機物質で環境への負荷が少ないため、有望な材料として注目を集めている。しかし、常温有機強誘電体は、電圧による電気分極反転が不完全なことが多く、電子デバイスの性能劣化や動作不良につながるという問題点を抱えていた。

共同研究グループは、新しく開発した常温有機強誘電体「6,6’-ジメチル-2,2’-ビピリジニウムクロラニル酸塩」を用い、電圧印加時の電気分極の反転過程をピエゾ応答力顕微鏡で可視化することに成功した。これにより、不完全な電気分極反転を引き起こす要因が、特定の向きを持った強誘電ドメイン壁にあることを発見した。さらに、このような強誘電ドメイン壁を熱処理によって取り除くことで、反転可能な電気分極量を5倍以上増大させることに成功した。これにより、常温有機強誘電体が本来持っている材料特性を最大限引き出すための手法が実証された。

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