奈良先端大,温度差により発電するフレキシブルなシートを開発

奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科光情報分子科学研究室教授の河合壯氏らは,配管やホースなどの曲面にぴったりと実装でき,排熱の温度差により発電する高性能の熱電発電シートの開発に世界で初めて成功した。

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省エネの観点から,熱回収と電力再生が効率的な柔らかい熱電発電デバイスが望まれている。これまでにフレキシブルなプラス型(p型,低温側がプラスに帯電)の熱電材料には導電性ポリマーやカーボンナノチューブなどが提案されてきたが,マイナス型(n型,低温側がマイナスに帯電)の熱電材料を組み合わせて理想的な双極型熱電発電シートを開発することが高効率の熱電変換には必要とされてきた。しかし,フレキシブルなマイナス型の熱電変換材料はこれまで開発されていなかった。

河合氏らは,軽くて丈夫なカーボンナノチューブに着目し,その熱電発電特性について研究を重ねた結果,通常はp型を示すカーボンナノチューブを安定なn型に変える一連の薬剤(ドープ材料)を発見した。具体的には,リン化合物誘導体を含む18種類のドープ材をカーボンナノチューブと組み合わせた場合に,カーボンナノチューブがマイナス型(n型)に変化することを発見した。

n型熱電変換材料としての熱電変換特性を示す条件を最適化して調べたところ,単位温度差あたりの発電電力に相当するパワーファクターは約30(μW/K2m)と見積もられた。これは1mm当たり100度の温度差があるとき,1cm2の面積でおよそ30mWの電力を生み出すことに相当する。さらに,この材料を使ってプラス型にもマイナス型にも変えられるフレキシブルな熱電発電シートを試作し,これが曲面上でも発電し,十分な電力を回収できることを実証した。

この技術を使い試作した熱電発電デバイス(装置)は,柔軟で,熱源に貼るだけで発電できることから,工業プラントの配管や複雑な形状をもつラップトップコンピューター等の排熱を利用して電力を再生する方法や,体温を利用した健康モニター用電源など,省エネや地球温暖化の抑制に貢献するアプリケーションが期待される。

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