東大、光の波面を90度スイッチングする光磁石を発見

東京大学大学院理学系研究科化学専攻教授の大越慎一氏の研究グループは、光で応答する磁性材料にキラル(不斉)構造を付与することで、物質から出てくる光の波面(偏光面)を水平と垂直の間で可逆的に光スイッチングする新現象を発見した。

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今回新しく開発した物質は鉄(Fe)イオンとニオブ(Nb)イオンをシアノ基(-CN-)で3次元的に架橋したキラル構造をもち、青色光(波長473 ナノメートル)と赤色光(波長785ナノメートル)を交互に照射することで、可逆的に磁石の磁力を変えることができる新しいタイプの磁石。

このキラル光磁石を用いて、非線形光学効果の一つである第2高調波(物質にある波長の光を入射すると、半分の波長の光が出射してくる現象)の研究を行なった。その結果、光照射前の非磁石状態では、入射面に対して水平な波面の光入射に対して、垂直な波面の光の出射が観測されたが、その状態に青色光を照射して磁石状態(光磁石状態I)にすると、水平な波面の光の出射が観測された。また、引き続き、赤色光を照射して磁力が弱い磁石状態(光磁石状態II)にすると、垂直な波面の第2高調波に戻った。このように、青色と赤色の光で磁石の状態を変えることで、第2高調波として出射される光の波面を可逆的に90度スイッチングすることに成功した。

これまでにキラル光磁石は報告例がなく、この物質が世界で初めての開発成功例となる。また、このような新しい物質を作り出したことで、キラリティと磁気的性質とが相関し、物質から出てくる光の波面が90度光スイッチングする現象の創出に成功した。このスイッチング現象は、最先端の光科学と物質科学を融合させて初めて達成できたものであり、従来のファラデー効果とは全く異なった現象で、光記録デバイスや光センサー、光通信技術などへの応用が期待される。

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