理研と千葉大、植物の大きさを制御する新たな手法を発見

科学技術振興機構(JST)課題達成型基礎研究の一環として、理化学研究所 光量子工学研究領域専任研究員の富永基樹氏らと千葉大学准教授の伊藤光二氏は、原形質流動の発生を司るモーターたんぱく質を人工的に高速化・低速化することで、植物を大型化・小型化させることに成功した。

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今回、富永氏らは、モデル生物シロイヌナズナからミオシンXIの遺伝子を単離し、運動速度を決定するエンジンに当たるモーター遺伝子を、移動速度が異なる他種のミオシン(生物界最速のシャジクモミオシンXIと植物に比べて速度の遅いヒトミオシンV)のモーターと付け替えることで、高速型・低速型ミオシンXIを人工的に作り出した。

それらのミオシンXIを単離して性能評価を行ない、さらに細胞内のミオシンXIでも性能評価を行なったところ、高速型・低速型ミオシンXIはそれぞれ通常のミオシンXIよりも高速化・低速化していることが実証された。

この速度改変型ミオシンXIを、シロイヌナズナで発現させたところ、高速型では植物が大型化し、低速型では植物が小型化することを見いだした。速度を人工的に改変したミオシンを生体内で発現させた例は動・植物を含め世界初で、これにより、植物の大きさを制御するために原形質流動が重要な支配要因となることを世界で初めて証明した。

原形質流動は基本的な現象であるため、さまざまな植物の大きさを制御できる可能性があると考えられる。今後は、原形質流動が植物の大きさを制御するメカニズムの解明を進め、将来的にはこの技術をバイオマスエネルギーや食物に関連した有用植物に適用し、地球環境負荷の低減に向けて貢献することが期待される。

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