東大ほか、水素結合の違いを高感度で検出することに成功

東京大学物性研究所、東京大学放射光連携研究機構准教授の原田慈久氏、理化学研究所技師の德島高氏らは、広島大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、アイスランド大学、ストックホルム大学、SLAC国立加速器研究所との国際共同研究で、大型放射光施設SPring-8の東京大学放射光アウトステーションビームラインBL07LSUおよび理研ビームライン物理科学Ⅲ BL17SUを利用して、水素結合の切れた水分子のみを選択して観測する手法を用いることにより、液体の水がミクロ不均一モデルに従うことを裏付けるとともに、軽水(普通の水)と重水(普通の水素より質量数の大きい水素からなる水)における水素結合の違いを高感度で検出することに成功した。

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水分子が持つ、同様な構造の分子と比べた時の沸点、融点の高さ、あるいは固体が液体より密度が小さいなどの独特な性質は、水分子を引き付ける水素結合と呼ばれる力によって説明されているが、この力が作り出すネットワーク構造については諸説ある。

中でも歪んだ水素結合で水全体がつながっているとする連続体モデルと、異なる水素結合の状態の混合であるとするミクロ不均一(混合物)モデルが知られているが、どちらのモデルがより的確に液体の水の水素結合を表したものであるかは、明らかではなかった。

今回の研究で用いた手法を水素結合が重要な役割を果たしている種々の化学反応や触媒反応、生体中の水にも適用することにより、水の役割の解明が進むと期待される。

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