東京大学生産技術研究所助教の増野敦信氏らの研究グループは,ガラスを加熱して結晶化させるという簡便な手法を用いて,カルシウム(Ca)を高濃度に含む新しい強誘電体(Ba,Ca)Ti2O5の合成に成功した。
強誘電体に含まれるCa濃度を幅広く調整することが可能となった結果,誘電率が最大となる特性温度を220~470℃まで自在にコントロールできるようになった。また,実験と理論計算を組み合わせた詳細な局所構造解析により,(Ba,Ca)Ti2O5ガラスを作製し結晶化することでCaを高濃度に含む(Ba,Ca)Ti2O5が得られるメカニズムを,原子レベルで明らかにした。
この成果は,単に新しいコンデンサ用材料の合成に成功したというだけにとどまらない。ガラスから結晶化させるとなぜこうした相が得られたのか,という相生成メカニズムを原子レベルで明らかにした点で,基礎科学的観点からも非常に興味深い内容である。今回合成した材料は熱力学的には準安定相と分類されるが,500℃程度では分解しない。そのため,車載用電子機器だけでなく,発電所や製鉄所などのより高い温度の環境でも使用できる可能性がある。
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