京大、時差ボケしないマウスの開発に成功

京都大学薬学研究科教授の岡村均氏らを中心としたグループは、時差ボケが起こるまったく新しい仕組みを解明した。この結果は、海外旅行にともなう時差だけでなく、睡眠障害や生活習慣病といったシフトワーカーの病態の新たな治療薬の開発につながるものとして期待される。

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視交叉上核の約半数の神経細胞は、アルギニンバゾプレッシン(AVP)を発現している。また、この数千にもおよぶ巨大なAVP神経細胞群は、AVP受容体であるV1aおよびV1b受容体も発現し、お互いの細胞間で視交叉上核内の局所神経ネットワークを形成している。しかしながら、この神経回路の機能はながらく不明だった。

今回、リズムセンターである視交叉上核がなぜ強力なリズムを形成するのか、その秘密の一つに視交叉上核の主要細胞であるAVPニューロン相互の神経間伝達があることを明らかにした。この細胞間連絡を阻害すると、環境の明暗周期の変動にきわめて脆弱となり、体内時計が容易に環境の明暗周期に同調することがわかった。

環境の明暗周期に容易に同調するとは、時差ボケしないということであり、V1aとV1bを消失した方が、時差が軽くなる。今回はマウスの実験だったが、ヒトにも視交叉上核はあり、またその中のAVPニューロン系は主要ニューロン系として存在するので、同様の機構がヒトにもあることが想定される。

V1aV1bアンタゴニストの適用による時差の軽減は、この視交叉上核のニューロン相互の神経伝達をターゲットにした全く新しい創薬であり、視交叉上核をターゲットにしたこの結果は、海外旅行にともなう時差だけでなく、睡眠障害や生活習慣病といったシフトワーカーの病態の新たな治療薬の開発につながるものとして期待される。

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