理研、腰椎椎間板変性症(LDD)発症に関する遺伝子「CHST3」を発見

理化学研究所は、軟骨の細胞外基質の代謝に関わる遺伝子「CHST3」が腰椎椎間板変性症(LDD)の発症に関与していることを発見した。

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日本人の腰椎椎間板ヘルニア患者と対照者、合わせて3,600人について、ヒトのゲノム全体を網羅する55万個の一塩基多型(SNP)を調べ、強い相関を示すSNPをいくつか発見した。それらのSNPをさらに25,000人の日本人、中国人、フィンランド人の集団を用いた相関解析を行なって確認し、LDDと最も強い相関を示すSNPを10番染色体上に同定した。

このSNPを含む領域は、共同研究機関の香港大学のYou-Qiang Song助教らが中国人のLDD患者18家系を用いて行なったゲノムワイド連鎖解析でLDDと強い連鎖を示す領域と重複していた。この2つの異なる遺伝学的手法により共通して示された領域には「CHST3」という遺伝子が存在した。CHST3は、軟骨の細胞外基質の主要な構成成分であるプロテオグリカンの代謝に関係する酵素を作り、椎間板の高度な変性を起こす骨の遺伝病の原因遺伝子としても知られている。

CHST3を詳細に解析すると、この遺伝子の3’非翻訳領域に存在するマイクロRNAが結合する配列にLDDと非常に強い相関を示す別のSNPが見つかった。さらに、細胞株やヒト椎間板組織を用いた実験で、このSNPによってマイクロRNAの機能を介してCHST3のmRNAが不安定となり、その量が減少することが分かった。

この研究でLDDに関連する新たな遺伝子CHST3を発見し、椎間板を維持するメカニズムの一部が明らかとなった。さらなる研究により、分子レベルでLDDの病態の理解が進み、新しい予防法や治療法、またその治療薬の開発が進むものと期待できる。

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