理研、アルツハイマー病発症メカニズムに細胞の自食が関与している可能性を発見

理化学研究所は、細胞の自食に新たな機能があることを発見し、この新機能がアルツハイマー病の発症に関与している可能性を示した。

131007riken1

脳機能障害を主症状とするアルツハイマー病の主な発症原因の1つに、凝集性ペプチドであるアミロイドβペプチド(Aβ)の蓄積が挙げられる。細胞から排出されて凝集したAβは不溶性のため脳内に蓄積し、アルツハイマー病に特徴的なアミロイド斑を形成する。

通常、細胞内に作られた異常、あるいは過剰なAβは、「自食」によってすみやかに分解、リサイクルされ、これにより生体の恒常性が維持されている。もし、自食機能が正常に働かなければ、細胞内の過剰なAβは分解されないまま蓄積されると考えられる。そこで研究チームは、「自食機能の欠失がアルツハイマー病発症に少なからず影響を及ぼしているのではないか?」という仮説を立て、自食とアルツハイマー病の関連について調べた。

実験では、自食機能を欠失させたマウスとアルツハイマー病モデルマウスを掛け合わせたマウスを作製し、脳内におけるアミロイド斑の蓄積について解析した。その結果、自食機能を欠失させると脳内に蓄積したアミロイド斑が劇的に減少することが分かった。つまり、Aβの分解が起こらないにも関わらず、細胞外のアミロイド斑が減少することから、自食機能にはAβの細胞外への排出という新しい機能があることを示している。また、細胞内Aβは強力な毒性をもち、神経細胞死と記憶障害を引き起こすことも分かった。

この研究における自食の新機能の発見は、アルツハイマー病発症メカニズムの解明に向けたきっかけとなり、この新知見をベースにした研究アプローチは、アルツハイマー病の予防や治療に応用できる可能性がある。

詳しくはこちら