住友電気工業は,FPC(フレキシブルプリント回路)を構成する接着材料を改良することで,150℃以上(上限:175℃)での環境下での長期信頼性(絶縁フィルム密着性・回路間絶縁性)を大幅に向上させたFPCを開発し,サンプル供給を開始した。
FPCは主に携帯機器をはじめとする電子機器に使用されているが,近年はその薄さや柔軟性,ファインピッチ回路や部品搭載可能なプリント配線板といった特長を生かし,LED照明や車載用途など,幅広い分野に採用が広がっている。電子機器用途での使用温度はほとんどが100℃以下に対し,照明や車載用途ではFPCに100℃以上の高い耐熱性が求められるケースが少なくない。
従来のFPCでは,150℃以上の高温環境下で使用した場合,構成材料が経年劣化するため,絶縁フィルムの密着性が大きく損なわれる問題があった。同社が開発したFPCは,構成材料である接着剤の耐熱性を改良することで,高温下での基本性能(耐熱性・高温高湿下での耐久性)を大幅に向上させることに成功した。
今回開発した接着材料は,耐熱性のあるポリイミド系の樹脂を配合することで,高温環境下での劣化を抑制でき,FPCの基本性能を大幅に向上させ,絶縁フィルムの性能低下を抑制した。高温環境下での耐久試験として,①大気中150℃での高温放置,②高温高湿中85℃・85%RHでの湿熱放置,③オイル中150℃での浸漬放置について評価し,いずれも初期および3000時間放置後において,FPCに求められるカバーレイの接着強度(JPCA規格,3.4N/cm以上)を満たすことを確認した。
使用分野は,高温での信頼性が要求される,車載パワートレインやLED照明機器の中継ケーブル,部品搭載基板としての用途を想定している。今後,これらの分野でも拡販を進めることで,配線材としての設計の自由度が高まるだけでなく,電子部品の小型・軽量化,および信頼性・耐久性向上に寄与できるとしている。
詳しくはこちら。