情報通信研究機構(NICT)は,英国ブリストル大学と共同で,Software Defined Networking (SDN)の一つであるOpenFlow を利用し,世界で初めてマルチコアファイバネットワークの動的制御に成功した。
マルチコアファイバは,光ファイバ1本あたりの伝送容量を拡大する新世代技術として研究が進められているが,交換機能も含めたネットワークの研究はほとんどなされていない。また,マルチコアファイバは,既存の単一コアファイバと異なり,コア数とコア位置ごとに伝送品質が異なる課題がある。
今回,マルチコアファイバと光スイッチから構成されるネットワークにおいて,マルチコアファイバの特性を考慮しコアや波長などを動的に制御するOpenFlowで伝送品質と帯域を保証する光パスの動的制御に成功した。今後さらに普及すると思われるOpenFlowによるネットワーク制御の成功により,マルチコアファイバネットワークの実用化に大きく前進した。
SDN技術は,個々のサービスに応じて柔軟に通信制御が可能であることなどから注目されている。SDN技術の一つであるOpenFlowは,電気スイッチネットワークでは実用化されているが,光スイッチのネットワークでは,シングルコアの光ファイバでの実験のみにとどまっていた。また,マルチコアファイバは,単一コアファイバを複数束ねた場合と違い,コア数やコアの位置によって伝送品質が異なる課題があり,伝送特性を考慮した複雑なネットワーク制御が必要とされていた。
今回NICTとブリストル大は,マルチコアファイバと光スイッチから構成されるネットワーク試験環境を構築し,OpenFlowコントローラから動的にネットワークを制御する実験に成功した。実験では,NICTがマルチコアファイバとマルチコアファイバの特性を活かし雑音除去する自己ホモダイン方式を開発,ブリストル大はOpenFlowの制御ソフトウェアの開発を担当した。
今回の実験では,伝送品質と帯域の保証が可能な光パスの制御を行なうために,OpenFlowのコントローラから使用するコア,波長,保証帯域(データレート),変調方式を指定するとともに,マルチコアファイバ用に拡張したOpenFlowプロトコルにより動的に光スイッチ制御を行なうことで,光パス上のデータ信号の送受信を確認することができた。また,データ信号の復調処理では自己ホモダイン方式を利用することで,信号処理の負担を軽減している。
各コアで複数波長が利用出来るマルチコアファイバネットワークでは,コアと波長の組合せによる多数の光パスの提供が可能で,例えば帯域保証が要求される超高精細TV会議等の多様なアプリケーションで,複数の光パスを有効かつ柔軟に利用することでサービス価格の引き下げなどが実現できると考えられている。今回の実験成功で,交換機能を含むマルチコアファイバを用いた新世代の大容量通信ネットワークの実用化が加速されるものと期待される。
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