NECら,印刷CNTトランジスタで世界最高の動作速度500kHzを実証

NECとTASC(技術研究組合 単層CNT融合新材料研究開発機構)は,大面積の電子回路を低価格で製造可能とする「印刷カーボンナノチューブ(CNT)薄膜トランジスタ」(以下 印刷CNT-TFT)において,高速動作させた際の寄生成分の低減と出力電流の向上に成功し,電子機器の制御回路への応用が可能な動作速度500kHzを実現した。

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印刷技術を用いて,あらゆる物の上に電子回路を形成するプリンテッドエレクトロニクスは,電子機器の製造を低価格かつ手軽に行なえるとともに,薄いシート状や変形できる電子機器などを可能にする技術として注目されている。これらの電子機器を実現するためには,演算・スイッチングなどを行なうための制御回路が必要であり,印刷で製造可能なTFTの開発が求められている。

NECおよびTASCが開発を進めている印刷CNT-TFTは,CNTの持つ導電性などの特長を活かした低電力で高速動作が可能な素子として注目を集めてきた。これまでNECは,CNTを使用しない一般的な印刷トランジスタの10倍以上の移動度(電荷の流れやすさ)を有する印刷CNT-TFTを実現しているが,電子機器の制御回路に応用するためには高速動作時の寄生成分の抑制や出力電流の向上が課題であった。

今回開発した印刷CNT-TFTは,スーパーインクジェット(SIJ)印刷法の採用し,高速動作時の寄生成分を一般的な印刷トランジスタの1/10以下に抑えるとともに,高純度なCNTインクの採用によって数十倍の出力電流を実現することにより,一般的な印刷トランジスタの10~50倍の500kHzという動作速度を実現した。これにより,制御回路に必要な性能を得ることができ,今後曲げられる大型ディスプレイや,多数のセンサを搭載したシートなど新しいデバイスへの応用が期待される。

開発した技術をさらに高めることにより,数MHzを超える速度で動作する印刷CNT-TFTも期待でき,将来的には薄型の無線通信機器や紙のようなコンピュータへの応用が可能となる。

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