阪大、2つの物体間に働く力とその間を流れる電流との間の関係を発見

大阪大学大学院工学研究科准教授の杉本宜昭氏、大阪大学産業科学研究所特任教授の森田清三氏らのグループは、名古屋大学大学院工学研究科准教授の阿部真之氏、チェコ科学アカデミーのグループ、マドリッド自治大学のグループらとの共同研究により、近接する2つの物体間に働く力とその間を流れる電流との間に、単純な関係があることを発見し、そのメカニズムを解明した。

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2つの物体を近づけて接触させると、その間に斥力が働き、それ以上近づけることができない。これは全ての物質は、原子から構成されており、接触面で原子同士が反発するため。しかし、接触する直前では、2つの物体間には引力が働き、引き合う。原子間に働く引力は微弱なため体感することはできないが、この化学結合力により原子は互いにつながり、物質を構成している。

一方、2つの物体に電圧をかけると、物体間の距離が大変近いときは、接触していなくても、その間に電流が流れることが知られている。これは、量子力学により説明される電流で、トンネル電流と呼ばれている。

化学結合力とトンネル電流は共に、2つの物体の原子間の電子雲の重なりにより生じ、この一見異なる2つの物理量についての同等性が、量子力学の基本問題として長く議論されてきた。

そこで、研究グループは、2つの物体を接近させて、近接する2つの原子間に働く化学結合力とトンネル電流を精密に測定した。原子間力顕微鏡を使って、半導体であるシリコンに対して実験を行なったところ、トンネル電流は、化学結合力の二乗に比例するという、単純な関係性があることがわかった。

これは、量子力学で予測されていたにも関わらず、これまで検証されていなかった、世界で初めての実験結果。この関係性は、エネルギーが等しい電子雲同士が重なり合った際に、量子力学から期待される関係であり、理論計算により、実験で用いた半導体では、確かにこの条件が成り立っていることを明らかにした。この成果により、様々なナノ材料やナノデバイスを設計する際の指針となることが期待される。

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